古酒(クース)の力
週刊レキオ社/(Vol.608 1996.11.21 Lequio 4)「耳寄りな話・耳の痛い話」コーナーより
先日、ちょっとした会合に招かれて、泡盛の20年物の古酒を味わう機会に恵まれた。
11月1日の「泡盛の日」にちなんだ小宴会で、めったにお目にかかれない年代物のクースが飲めるというので、知人数人も忙しい仕事をどうにかやりくりして出席していた。
首里寒川にある泡盛専門販売店「泡盛館」の地下が会場。
酒蔵として使われているだけに、各酒造所の製品がぎっしり陳列されていて、酒飲みには天国のような場所だ。
さながら「泡盛博物館」のように、今はもう発売されていないような古びたラベルの三合瓶から、最近出た銘柄まで数多く並べられていて、ながめているだけで楽しくなってくる。
そんな会場に70人ほどが座り、しばらく談笑していると、来ました出ましたお待ちかねの20年物のクース。
カラカラから小さな猪口(ちょこ)に注いでみる。
ごくごくわずかながらトロみがあるようだ。
鼻に近づけ嗅いでみた。
思わず「うーん」とうなる。
上品な蜜のような香りがしたからだ。
「これが本当の麹(こうじ)の香りなのか」と、感心してしまった。
いよいよ口に含んでみて、さらに驚いた。
ブランデーじゃないかと思うような甘みが舌の上に広がり、ほのかな香りが口の中にいっぱいになったからだ。
「それでもオレは泡盛なんだぞ」と、酒はどこかで個性を主張しているようだが、味と香りは本当にまろやかだ。
喉を通る際も、スーっと何の抵抗もなく落ちていく。
知人も決まったように「へー」とか「ややっ」とかの驚きの声の後、「これ、ホントに泡盛なの」「さすが、やっぱり普通の泡盛とは違うね」と感激した表情。
もちろん、だれ一人として氷を入れたり、水で薄めるなんて罰当たりな事はしない。
席上では、同時に「幻の酒」と言われる泡盛も出たが、長い年月を重ねて味わいを深めた古酒の前では分が悪く、みな20年物のカラカラの方に手が伸びがち。
いつもなら酒が入れば冗談を言い合い、熱弁を振るったりする仲間たちも、この日は口数が少ない。
琉球舞踊が披露されたりする中、静かに猪口を重ねて、古酒の味を堪能していた。
泡盛は世界に誇れる酒であることを、あらためて感じた幸せな夜だった。
(寿)
※このコーナーは琉球新報社のデスクや第一線で活躍する記者が担当しています。
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