われら、泡盛・焼酎党
島酒天国8
沖縄通信「うるま」1999.3月号.780yen
表紙(JPG/57.6KB)


「泡盛よもやま話」其の三

仲村征幸=文
text by Seikou Nakamura

 小誌は創刊号から第7号で一周年を迎えている。その一周年記念号に「琉球泡盛今と昔」という大見出しで座談会を開いている。
 出席者は石川逢篤(元泡盛製造業者=故人)、佐久本政良(咲元酒造合資会社先代社長=故人)、花城清用(元泡盛製造業者兼琉球新報記者=故人)、新里肇三(琉球泡盛産業株式会社当時専務=現(合)新里酒造社長)の各氏である。
 司会は浜元朝起琉球泡盛産業(株)当時総務部長。第8号から題字は醸界飲料新聞に変えている。その座談会によると、戦前の泡盛の生産高は3万5千石〜4万石。
 内、1万8千石が東京、大阪を中心に移出されている。大正末期から昭和2年〜5年にかけて泡盛も大恐慌時代に入り、その時代に30軒位が倒産に追い込まれている。それが昭和の10年ゴロから11年にかけて琉球泡盛はようやく全盛時代を迎えるのであるが、そこへ戦争の勃発である。もしもあのいまわしい人類の不幸がなかったなら、われわれはすでに今日百年余のクースを心豊かにして賞味できたであろう。
 返すがえすも残念なことである。
 琉球泡盛もまた去る大戦では一大被害者である。壊滅した筈の琉球泡盛だが、ここに奇跡的にも生存したクースがあった。那覇市首里赤田町にある(有)識名酒造が現在保有する100年余の壷入りクースである。識名一家は去る大戦時、沖縄県の北部に避難を余儀なくされた時、工場脇に3本のクース壷を地中深く埋めた。その1本が現在も脈々と生き続けている。
 私は此の識名酒造の至宝と3回対面し、一度だけ味わうことができた幸せ者である。開封した瞬間、部屋いっぱいに広がるあの馥郁たる香りに圧倒された。
 味は何故か最高級の洋風に近く言葉では表現できかねる。度数も落ちてない。飲み干したグラスにはいつまでも香りの余韻が漂う。琉球泡盛のクースはかつて尚順男爵の松山御殿には何百年クースがあった、と山里永吉さん(故人)が語っていた。ひるがえって現在、市場には10年、15年、20年、25年クースが出るようになった。世界に類例がないわが琉球泡盛の貯蔵法は先人の偉大なる知恵の産物である。
 王宮文化が昇華したわが琉球泡盛の歴史は古く、600年にもなる。今宵、その技法のこうれき来歴を肴に飲み交わすも良し。クースのつくり方云々で飲むも又良し。
 が、ただひとつだけ忘れて欲しくない事は酒が大先輩であり、人間様が後輩である、ということではなかろうか。...(つづく)


なかむら・せいこう
沖縄ヘラルド・沖縄朝日新聞
琉球新報・沖縄グラフ社を経て
1969年5月、醸界飲料新聞を創刊
現在に至る。



山原大宜味の酒


第8回目
田嘉里酒造所
――― Takazato Syuzousyo ―――

名水だけが造りえる
まろやかな泡盛

(泡盛に銘柄名がなかった頃の記号のようなネーミングである。「○田(まるた)」はもちろん地元の地名、田嘉里からとられたものである。)
 やんばると呼ばれている沖縄本島北部、原生林が山々を覆い清らかな湧き水があふれでる、大宜味村田嘉里の自然豊かな地に田嘉里酒造所はある。本島最北端の酒造所としてやんばるの人々に「○田(まるた)」の名前で親しまれている、小さな造り酒屋だ。
 田嘉里酒造所の銘柄には「○田泡盛」、国指定天然記念物世界でも珍しい野鳥ヤンバルクイナの名をそのまま銘柄にした「山原くいな」、昨年村制90周年記念としてだされた「ぶながや」の3つがあり、度数の違いと古酒とでさらに種類分けされている。
(左/山原くいなのマイルドタイプ「古酒やんばるくいな」25度、1,034円・右/村制90周年記念の「古酒ぶながや」25度、1,097円・注/料金は全て税込)
 「とてもまろやかで口あたりがいいですよ。山から湧き水をひいてきてますから、沖縄で一番おいしい水をつかっているからね」
 現在会長を務める池原三郎さんが「うちは水だけが自慢さあ」と語るように、ここやんばるの湧き水は遠くは那覇からもポリタンクを担いで汲みにくるほど人気のあるおいしい水である。大正5年生まれ82歳の三郎さんがいまでも元気に泡盛造りを続けられるのも、この水のおかげなのかもしれない。

 田嘉里酒造所の創業は昭和24年。民政府時代に全琉一斉に酒造免許がおりた時、戦前は製糖工場で戦後は精米所として使用されていた建物を利用し、部落所有の酒造所をつくったのが始まりである。創業時の社長は大嶺深水さんで専務として池原三郎さんが入っていた。昭和58年池原さんが社長となり、平成9年に息子の池原秋夫さんが3代目を継いでいる。
 戦前の田嘉里では、酒は首里から買い付けていたという。羽地や名護にも酒造所はあったが、配達はしてくれず船も着けなく不便で、水路で直接那覇から日用雑貨品とともに買っていた。そういった訳で村に酒造所ができたことの喜びは大きかったに違いない。

(田嘉里酒造所の従業員のみなさん。真中左側の方が会長の池原三郎さん。その右側が社長の池原秋夫さん。)
 創業当時、酒造所では米で麹を造り、今帰仁から買った黒糖を加えた酒を造っていた。仕込みの技術者は専門家を那覇からよんで技術指導してもらっていたそうだ。昭和30年頃から、酒造連合組合を通してタイ米が順調に入るようになり、麹菌は首里まで買い付けに行っていたという。昭和37年頃までは砂糖を使った醸造がおこなわれていたそうだ。販売は大宜味村と東村が主で、配達にはオートバイや自転車に水管1斗を乗せて配達するのがほとんであった。昭和32年頃からクルマを使うようになり、2斗から5斗の甕を小売店が準備していて、運んできた酒をそれに入れ、お客さんに量り売りしていたそうだ。

(写真左:昭和35年頃の趣のある建物で醗酵されるもろみ。なんともいえない香に酒欲が刺激される。/写真右:田嘉里酒造所/大宜味村田嘉里417/電話:0980-44-3297)
 「昔は麹は自然の温度で造っていて、温度の上がる夏場はうまくいかなくてね。昭和48年の復帰前後に麹の温度調整機が出来たのは本当に画期的なことでしたよ」と池原三郎さんは当時を振り返る。
 現在、主要銘柄である「山原くいな」は県内でもファンが多く、とくに古酒はおすすめである。
 社員8人、全員が田嘉里の生まれで、まさに田嘉里の人が造る田嘉里の酒といえよう。

(左:山原くいなの5年古酒「KUINA BLACKシルバー」40度、1,897円/右:同じく8年古酒「KUINA BLACKゴールド」43度、2,510円)


(左:「山原クイナ」30度、777円/右:「○田泡盛」30度、382円)





山原くいなの呑める店
海産物居酒屋ハイサイ

 辺土名バスターミナルの前にあるこの居酒屋は地元でも評判の店で、漁師である父親が捕ってきた魚貝類を母親とオーナーである大嶺仁さんが料理してだしている、家族経営のお店だ。

 もちろんここのお薦めは地元辺土名近海で捕れた新鮮な魚。特上のお刺身で2,000円。煮つけから魚汁、バター焼、お寿司と魚料理が1,000円から1,500円くらいで食べることができるし、沖縄料理も充実している。「オーナーが海人につき生鮮料理をつくっていますが、漁場の天候によりメニューの変更があります」と壁に張られているように、漁師であり、ダイバーでもある父親さまさまである。

左から大嶺仁さんとお母さん、奥さんの悟子さん。魚が本日の漁果。


ここのメインボトルは「やんばるくいな」の古酒25度(2,500円)。30〜40歳位の人に人気があるそうだ。ほかにも「まるた」20度(2,500円)が置いてあり、近くにある姉妹店の「BAR FAT BOY」には15年ものの甕に寝かせた田嘉里酒造の古酒があるというので、お早めに。

国頭村辺土名276
電話0980-41-5153
営/17:30〜23:30
休/月曜日

三合瓶だちゃー 第七回
酒ぬまぁー問題

草茫茫=文
text by kusa boubou

 三合瓶だちゃーなんちゅーワイルド・アット・ハートなタイトルなんで毎夜、泡盛片手にウンチクたれて飲んでいる豪快かつ煙たいオヤジと思われるかもしれぬが、実は、料理や酒の肴に合わせて酒を選ぶ、ちょこざいなオヤジなのである。
 もちろん自称・沖縄県産品奨励人であるからして血中アルコール濃度の大半は泡盛とオリオンビールで占められている。
 が、しかし時には中華や台湾料理なんか肴に飲むと、ついつい招興酒 だし、フレンチやイタリアンならコッパズカシーけどワイン。こざっぱりとした和食なら日本酒、ウチナー料理なら泡盛と至極あたりまえ過ぎる選択なのである。
 さらに肴レスなら薄暗い止まり木で、シングルモルトやらラムやらジンをロックでグビグビ。クイックに酔いたい時は、ウォッカのスピリタスベースのソルティードッグ(脳みそが気持ちよくシビレル)さらに風邪予防のためのナイトキャップは、ヒル酒(泡盛にニンニクを漬けたオヤジティストな酒)をワンショットで明日の活力よ。
 つまり、実は、酒ならオールウェイズウェルカムなのさ(それってメチャメチャ依存症ちゃうの)。
 で、何が言いたいかちゅうたら、酒と料理は野球で言えばピッチャーとキャッチャー、お笑いで言えばボケとツッコミ(ちょっと違うか)みたいなどちらが欠けても成立しない密接な関係ですよね。
 で、話は泡盛に戻るが、泡盛はありとあらゆる酒の中でも、料理との相性がいい。もちろんジャストマッチを狙うなら前述した選択となるけど、泡盛の端正、淡白な味覚は「どんな困難な道でもあなたについていきますわ」なんて演歌的女の心情にも似た趣がある(なにそれ)。
 現在、泡盛は大きく分けて新酒と呼ばれる一般酒と3年以上熟成させたクースと呼ばれる古酒がある。
 それで演歌的女が泡盛の一般酒だとすれば、クースはちょっと一筋縄でいかない自立したちょっといい女的趣である酒だと両者を勝手に定義している。
 酒を女性にたとえるなんて、かなりオヤジであるが、本題に入る前に字数が尽きてきた……つづく。
 酒旅はいつまでつづくのか……。